サービス・ソリューション
故障と対策
使用環境が悪かったり、乱暴な取扱いをしたり、または老朽化してきますと一般機械と同様で、種々の故障や不具合が生じてきます。
そのすべてを述べることは困難ですが、一般的な物を次に取上げてみますので、御参照願います。
この例にないものは特殊なことが多いので、ぜひ弊社特約店またはもよりの支店・営業所・分室ヘ御連絡願います。
全 | S2、U3、HU3、US、HUS、R、UR形 |
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商 用 | R、S2形 |
I N V | U3、HU3、US、HUS、UR形 |
故障内容 | 機種 | 原因 | 対策 |
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1. ホイストまたは押ボタンにふれると感電する | 全 | (1) Iビームまたは押ボタンの金属外函の設置不良 (2) Iビーム表面に塗料等がついている |
(1)アースを完全にする 200Vで100Ω以下 (2)状況に適したホイストを使用 (防水形等) 塗料等を完全に除去 (3)点検・修理 (4)点検・修理 (5)乾いたコンクリート等導電性の低い床面とする |
INV | インバータ出力電圧の高調波成分により漏れ電流が多くなる。 漏電ブレーカの定格感度電流は不要動作防止のため100mA以上とするこの場合漏電ブレーカは漏電火災等の防止用であり,感電防止用ではないので,右対策(1)(2)(5)項を厳守しなければならない |
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全 | (3)ホイストまたは押ボタンの絶縁不良 (4)他の機器,配線から漏電した電流が Iビームを伝ってホイストに達する (5)床面の導電性が高い ・水等導電性の高い液体によって湿潤している ・鉄板上,鉄骨上,定盤上等で導電性が高い |
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2. 押ボタンの記号と逆に運転される | 全 | (1)電源の接続間違い | (1)電源R相,T相入替え (2)正常に戻す |
INV | 電源の接続勘違い(横行が商用運転のもの)インバータ駆動の場合は,電源の接続を間違えても,逆に運転されることはない | ||
全 | (2)ワイヤロープの逆巻き | ||
3. ワイヤロープの損耗がはげしい | 全 | (1)横引・縦引が多く,磨耗する (2)乱れ巻き (3)平行より以外のワイヤロープ使用 (4)ワイヤロープ油を塗らなかった |
(1)使用方法改め (2)4項参照 (3)ワイヤロープの取替え (4)油塗布 |
4. ワイヤロープの巻付けが不揃いになる | 全 | (1)横引・縦引の角度が大きすぎる (横引10°縦引 3°以内か?) (2)ワイヤロープにくせがついている |
(1)使用方法改め (2)取替え |
5. リミットスイッチ2段目が動作する | 全 | (1)電源の接続間違い (2)ワイヤロープの逆巻き (3)無負荷高速機能を設定して,上限停止設定をしていない,または上限設定位置が高すぎる |
(1)電源R相,T相入替え (2)正常に戻す (3)適当な位置に上限を設定する |
6. ワイヤロープ切断 | 全 | (1)巻上げ中,物に引っ掛かる (2)薬品その他による腐食 (3)損耗のはげしいワイヤロープをそのまま使用 |
取扱い,保守点検を完全に行い,不良ワイヤは取替える(三菱純正部品を使用する) |
7. 押ボタンを押しても接触器が動作しない | 全 | (1)押ボタンの故障あるいは,押ボタンケーブル断線 (2)電源スイッチ,ヒューズ,配線,接触器,押ボタン等の配線不良,トロリ接触不良,ネジ緩み等 |
(1)修理・取替えまたは切上げ (2)点検・修理(展開接続図参照) |
INV | (3)インバータが3相出力を出していない | (3)インバータの点検 | |
US形 U3形 S2形 |
(4)センサからの信号が全く返ってこない。または,RRS基板からの回転信号(2相信号)のうち片方の1相信号が返ってこない | (4)RRS基板の点検・取替え,信号線(マイクロホンコード)の断線点検 | |
INV | (5)過荷重で巻上モータトルクが不足し,停止した (6)過頻度使用による巻上モータ温度上昇でトルク低下し停止した |
(5)荷重を軽くする (6)使用頻度を抑える |
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8. 巻上運転中,下降し停止した | INV | (1)過荷重 (2)巻上モータの過熱 (3)巻上モータの断線 |
(1)荷重を軽くする (2)使用頻度を抑える (3)点検・修理 |
9. 巻上中に急停止した | INV | (1)過荷重高速巻下げによりインバータ過電圧トリップ | (1)荷重を軽くする |
U3形 | (2)使用頻度過大による放電抵抗温度上昇に伴う抵抗値上昇によりインバータ過電圧トリップ (3)放電抵抗の断線 |
(2)使用頻度を抑える (3)点検・修理 |
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10.モータに電気は来るが,うなるだけで始動に長く時間がかかる(2秒以上のとき) | 全 | (1)途中の配線,スイッチ不良,トロリ接触不良, ネジ緩み等で電気抵抗が大きくなっている (始動時の電圧降下) (2)配線の細すぎ,または長すぎ (3)電源電圧が低すぎた (4)電磁ブレーキが解放しない (5)電磁ブレーキのコイル故障 |
(1)点検・修理 (2)ケーブル選定表により,配線変更 (3)変圧器タップ変更 (4)14項参照 (5)コイル取替え |
11.巻上げ・巻下げ運転中に急停止する | 全 | (1)リミットスイッチ1段目が動作 (2)巻上ブレーキが制動する |
(1)巻下げる (2)14項参照 |
INV | (3)電源電圧が低すぎたためインバータトリップ (4)過荷重,地球吊りによるインバータトリップ (5)過荷重による落下検知 (6)ノイズによる誤動作 |
(3)変圧器タップ変更 (4)巻下げ荷重を見直す (5)巻下げ荷重を見直す (6)3相電源にノイズフィルタ挿入 |
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12.モータが過熱する | 全 | (1)インチング頻度が大きい (2)電磁ブレーキが開放しない (3)運転時間が長い (4)過荷重 |
(1)特殊設計にする (2)14項参照 (3)10項に同じ,または使用頻度を抑える (4)荷重を軽くする |
13.押ボタンを押したら接触器がバタバタする | 全 | (1)電圧降下過大 | (1)10項参照 |
14.リレーは動作するが電磁ブレーキが開放しない 電磁石が吸引しない |
全 | (1)電圧降下過大,または電源電圧低すぎ (2)鉄心,ギャップ過大 (3)ギャップなし,調整過大 (4)可動部分の引っ掛かり (5)ブレーキ回路ケーブルの断線,ネジ緩み等 (6)ブレーキ回路ダイオード(直流)不良 (7)コイル焼損 (8)中央部スキ過大 |
(1)10項-(2),(3)参照 (2)ブレーキ板取替え (3)再調整 (4)修理 (5)点検・修理 (6)ダイオード組立取替え (7)15項参照 (8)修正 |
15.電磁ブレーキコイル焼損 | 全 | (1)使用頻度大 | (1)使用方法改めコイル取替え |
16.電磁ブレーキの効きが悪い | 全 | (1)鉄心,ギャップの過大 (2)リレーの入りが悪い (3)電磁接触器の切れが悪い (4)ブレーキ板に油が付着 (5)速切接触器動作不良(直流) |
(1)ブレーキ板取替え (2)リレー取替え (3)内部配線点検 (4)脱脂を行う,またはブレーキ板取替え (5)接触器取替え |
17.横行ブレーキの効きすぎ, または効かない | 全 | (1)ブレーキ調整不良 | (1)調整ボルトで適正にする |
18.横行ブレーキが効いたまま回転 | 全 | (1)ブレーキコイル断線,誤結線 (2)ダイオードの故障,誤結線 (3)空隙の小さすぎ,または大きすぎ (4)ブレーキ、ライニングの固着 |
(1)修理または取替え (2)ギャップの調整 (3)点検、修理 (4)点検、修理 |
19.横行モータの回転力不足,または動かない | 全 | (1)ブレーキコイル断線,誤結線 (2)ダイオードの故障,誤結線 (3)空隙の小さすぎ,または大きすぎ (4)ブレーキ、ライニングの固着 |
(1)修理または取替え (2)ギャップの調整 (3)点検、修理 (4)点検、修理 |
20.歯車音が異常に大きくなる | 全 | (1)歯車および軸受の摩耗 | (1)取替え |
21.横行車輪の空転 | 全 | (1) I形鋼の傾斜により駆動側横行車輪が浮いている (2) I形鋼転走面に塗装,油,ほこり等がついている |
(1)ホイストの前後を逆にする (2)清掃または必要であればグラインダがけを行う |
22.トロリホイルが外れ易い | 全 | (1)トロリ線張方規定通りでない (2)トロリポールの方向が反対 (3)高さが合っていない |
改善 |
24.過荷重警報装置が正常動作しない | S2形 | (1)基板に電源が正しく接続されていない | (1)正しく接続する基板のA, Bに対し1, Sと接続 |
24.押ボタンがスムーズに押せない,戻らない | 全 | (1)ゴミ等の侵入による内部ユニットの引っ掛かり (2)内部ユニットの故障 |
(1)点検・修理 (2)取替え |
25.巻上げ,巻下げの押ボタンを押しても荷重が下がる | 全 | (1)ロータ空転(モータ軸とのハメアイが緩い) |
(1)取替え ※この場合押ボタンをすぐ離せば停止する |
26.交流ブレーキの電磁石(固定鉄心/可動鉄心) 部分で異音(ブザー音)が発生する。 |
全 | (1)電圧降下過大,または電源電圧低すぎ (2)電磁石吸着面に異物が噛み込んでいる (3)電磁石吸着面が偏摩耗している (4)電磁石部分の破損 (特にくまとりコイル) (5)ブレーキコイルのタップ接続間違い(50Hz or 60Hz) |
(1)10項-(2),(3)参照 (2)吸着面の清掃 (3)電磁石組立の取替え (4)電磁石組立の取替え (5)電源周波数の確認タップ接続の変更 |
給電関係 良否の判定方法 (始動時の最低電圧の測定) | |
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作 業 手 順 | 判 定 対 策 |
1. トロリ線の電源スイッチを切って、電圧計 (テスタでも可)をトロリポールの絶縁軸付近に接続する 2. トロリ線電源スイッチを入れて電圧をよむ 3. 上記測定を各相とも(R-S間、S-T間)行う |
3相とも200V~220V (※400V~440V) あれば合格 (60Hzは240V (※480V) までよい) なければ電圧器のタップ変更 3相不揃いなら、変圧器配線関係調査 |
4. 上のように電圧計、電源スイッチを入れたまま㊤の
押ボタンスイッチを押すと、始動時に一時的に流れる
大きな始動電流による電圧降下のため電圧計の針は
一度低い方にふれた後高い方に戻る
この低い方にふれたときの最低電圧をよむ 5. 上記4の測定を3相とも行う |
3相とも180V (※360V) 以上なら合格 60Hz地域170V (※340V) 50Hz地域160V (※320V) 以上ならどうにか使用可 前記電圧以下なら不可(改修方法前表10項参照) 3相不揃いなら前表10項の(1)原因による 故障であるため修理が必要 |
(注意)
電磁石が吸引したり、モータが始動したりする際の電圧は、上記4で測った最低電圧ですから、この最低電圧で必ず判定してください。
連絡の際も、2の電源電圧と共に4の最低電圧も必ずお知らせください。
(インバータの電源電流測定時の注意)
1. 低速巻下運転時は荷重により巻上モータからインバータへ回生エネルギーが戻るため、電源電流は
ほとんど流れません。
2. 無負荷あるいはそれに近い荷重での巻上運転時はほとんど電力を必要とせず、電圧の高い2本の電源線により電力が供給されるため、他の1本の電源線には電流が流れないことがあります。
3. 巻上運転時のインバータ入力電流は正弦波でないため、揺れて確定しないことがあります。